日本のコンビニの生みの親とも言えるセブン&アイホールディングスの鈴木敏文会長兼CEOが先日退任を発表しました。セブンイレブンの社長人事における経営陣・伊藤名誉会長・大株主の意見と鈴木氏の意見の相違が原因のようです。
今回の問題はカリスマ経営者の引き際と企業統治(ガバナンス)の二つの問題がポイントであると思います。
鈴木氏は経営の天才と言えるでしょう。昭和40年代に始めたコンビニエンスストア。コンビニでの公共料金の決済業務。銀行業への進出。オムニチャネルへの進出。これら誰もが思いもつかない、周りが反対するような新しいビジネスをことごとく成功させてきました。鈴木氏のおかげで世の中が便利になった功績は大変大きなものだと思います。おそらくセブングループの意思決定において、多くの凡人の意見を集約するよりも一人の天才である鈴木氏の判断を尊重したほうが成功の確率が高く、決断のスピードも格段に速かったのだと思います。そのカリスマに引導を渡すことは並大抵のことではないと思います。今回の取締役会の結論に対して鈴木氏が反発し、自分の意見を押し通すこともできたでしょう。しかし鈴木氏は自ら引退を決断しました。今回の事件は鈴木氏に対する批判的な意見もあるようですが、私は鈴木氏の引退の決断は大変立派だったと思います。自らの方針が正しいと信じつつも、周りの意見はきちんと尊重するという姿勢に「カリスマの中の謙虚さ」を感じるからです。
カリスマ経営者は憎まれることも多いでしょう。下で働く人はハラワタが煮えくり返る思いも結構していると思います。スズキの鈴木修氏、日本電産の永守重信氏、ユニクロの柳井正氏、ソフトバンクの孫正義氏、楽天の三木谷浩史氏。現役のカリスマ経営者はたくさんいます。彼らが今後どんな引き際を見せるのか注目したいと思います。