「老いる家 崩れる街」

投稿者:落合智貴
講談社現代新書から出ている「老いる家 崩れる家 ~住宅過剰社会の末路~」(野澤千絵著)を読みました。
日本の人口は2010年の1億2806万人をピークに減少が予想されています。
一方、日本の総世帯数が5245万世帯に対し、住宅のストックは6063万戸あるそうです。
つまり住宅ストックの約16%は空き家であり、その数は800万戸を超えるということです。
今後人口減少と世帯数の減少が進み、2023年には空き家数1400万戸、空き家率が21%になるとこの本は予想しています。
2015年1月に相続税の基礎控除が低くなったことが、相続税対策として賃貸アパートを建築することを促進しました。都心部だけでなく地方においても農家の跡継ぎ不足により農地を賃貸アパートに転用する例も増えているそうです。タワーマンションの建築によって都心のマンション世帯は増え続けています。

都市計画の規制緩和によって、都市部から離れた場所に住宅が建ちます。そうするといわゆるスポンジのようなスカスカな状況が進みます。都市の面積は広がるものの、社会インフラのコストが上がる状況が進んでしまうということです。
コンパクトシティを作っていこうとの国の政策があるにもかかわらず、現実には人口の低密化が進んでいるというのが現状のようです。

不動産業界は過去の成功体験をもとに建設を続けることになります。賃貸住宅を建てれば大きな利益が残るとの成功体験も大家さんは持っているでしょう。
このバブルはいつか弾けるとこの本は警告しています。

建設に関わる身としては建設需要が増えたほうが良いと考えるのですが、この状況は将来に大きなリスクを残すということを頭に入れておかなければなりませんね。