いまさら“イアン・ブレマー”

投稿者:落合智貴
アメリカの政治学者イアン・ブレマーの著書「Gゼロ後の世界」が発表されたのが2012年ですから今から3年前になります。私より1歳年上の彼が、安倍総理をはじめとする世界の政治家に影響を与える論理を展開していくことを尊敬のまなざしで見ておりました。
以前から読みたいと思っていたこの「Gゼロ後の世界」をようやく読むことができました。

イギリスが世界の覇権を握っていたのが18世紀ごろからですが、第一次・第二次世界大戦を経て世界の覇権はアメリカが握るようになりました。戦後はソ連との二大勢力が冷戦状態の中睨みあう状態が続いていましたが、東西ドイツの統一やソ連の崩壊によって二極体制が崩れました。その後西側諸国を中心とするG7が世界の重要事項を決めるようになりましたが、その範囲はBRICSなど新興国に拡大し、今ではG20が主要な会議体となっております。
しかし20カ国の首脳が集まったところでそれぞれの利害が複雑すぎてリーダーシップを誰も取ることが出来なくなっているのが現状のようです。
アメリカはもはや財政的・軍事的理由から世界の警察官の役割を果たせないと宣言し、相対的な覇権の力を落としているというのが現在の状況です。
イアン・ブレマーはその状況を「Gゼロ」と称しています。
そしてこの「Gゼロ」の状況は長くは続かず、「その後」の世界を予想するのが本書の主題となります。

Gゼロ後の想定されるシナリオをイアン・ブレマーはいくつか考えています。
1、G2(米中パートナーシップ)
 ―世界のリーダーシップをアメリカと中国が分担する体制―
2、協調(実際に機能するG20)
 ―緊急事態において先進国と新興国が共同で重責を分担できるか?―
3、冷戦2.0(さらにひどい状況)
 ―アメリカと中国が軍事的に対立―
4、地域分裂社会(各国はそれぞれに)
 ―局地的、地域的なリーダーシップを発揮する国が各地域に台頭する―
5、シナリオX(Gマイナス)
 ―国際秩序が分裂し、各地で無政府状態が頻発する―

フランスのテロなど世界が解決しなければならない課題は終わることがありません。
日本は既に世界情勢に大きな影響力のある国となっています。
私たち日本人も今まさに世界の歴史の渦中にいるという当事者意識が必要だと思います。